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大井町線「等々力駅」徒歩2分
 
   等々力渓谷は、桜の名勝として知られ、また都内に残る数少ない渓谷です。

 大井町線等々力駅から南へ歩き、大きな木を目印に右に曲がるとゴルフ橋があります。その橋のたもとの階段を降りると、緑深い樹林の中を谷沢川が流れ、せせらぎの音と野鳥の声が響く渓谷の世界が待っています。澄んだ空気に包まれ、渓谷の自然の中を流れに沿って歩いて行くと所々に湧水が見られます。環状8号線の下を抜け、等々力渓谷三号横穴古墳や等々力不動の歴史を訪ねながら歩いて行くと、住宅へ抜けていきます。

 「山には雲が漂い、谷には清い泉が吹き出していた......」と、はるか900年の昔、興教鯛大師はこの辺の景色を夢にお告げで見てこの地に不動堂を建てたと言います。

 この等々力不動は満願寺の別院で、流轟山明王院と言い、役の行者が滝の側に不動明王をまつって霊場としました。今では滝に打たれて行をする修行者の姿は見かけなくなりましたが、古くからこの不動の滝は、各地からの修業者が絶えなかったほどよく知られてました。

 不動の滝はいつでも涸れる事なく、谷沢川に流れ落ちています。等々力という地名は、この滝の轟く音から里人が呼称したという説もあります。

 滝の横の階段の途中には、役の行者の像が岩穴にあります。さらに階段を上ると、江戸末期に建てられた等々力不動尊の不動堂があります。役の行者のゆかりもあり、交通安全や学業成就などいろいろなご利益があると言います。

 この渓谷の公園内には、都指定史跡の等々力渓谷三号横穴古墳があり、ガラス越しに見学できます。これは谷沢川の東斜面の崖に群集している横穴のひとつで、古墳時代末期から奈良時代のものと推定されています。ここからは須恵器や金銅製耳環などと共に、男女と子どもの三体の人骨も発見されました。


 谷は若葉から青葉へ枝葉を広げ、山桜から紅葉へと彩りを移し、深山幽谷の趣きを残しています。ミズヒキ・エビネなどの野草が繁り、ケヤキやムクノキなどの樹林の間から、オナガ・シジュウカラ・ヒヨドリ・モズなどの歌声が聞こえてきます。

 また不動堂の隣には公園があり、春には157本もある桜が、あたり一面を薄桃色に染めます。


 平成17年4月、等々力渓谷公園の一部として新たに拡張開園した区域も名勝指定区域に含まれ、園内には斜面林や湧水など、豊かなみどりが残されています。

この公園拡張区域は谷沢川の右岸に位置し、崖地の地形や自然環境を巧みに活かし作庭された庭園が保存されています。

 この庭園は著名な造園家により、昭和48年に作庭されたものとして記録されています。

 また、園内には昭和36年に棟上げされた書院建物も保存されています。この書院周辺の庭、流れ、滝の石組み、崖地の地形を活かし付けられた石畳の園路など、建物と庭が一体となった自然・文化的環境が残されています。